灰色の荒野ハデス
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灰色の荒野ハデス /Gray Waste of Hades | |
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外方次元界 | |
解説 | ハデスは下層次元界のどん底にあり、そして互いの根絶を目指している2つのフイーンド種族の中間にある。従ってハデスでは、莫大なデーモンの軍団、そしてそれと数を等しくするデヴィルの軍団が互いに助けを請うことも慈悲を与えることもせずに戦い、その軍勢で灰色の平原が黒く埋め尽くされるのが頻繁に見受けられるのである。どこかに悪を体現している次元界があるとするならば、それはこの"灰色の荒野"なのだ。 灰色の荒野ハデスでは、純粋にして薄まることもない悪が強い霊的な力として働き、すべてのクリーチャーを堕落させる。ここではアビスの煮えたぎる激怒や九層地獄のもって回った企みですら、絶望の前に屈服させられてしまうのだ。この悪の極北たる次元界では無関心と絶望がすべてに浸透してゆく。ハデスは訪問者の夢や欲望の息の根を緩 慢に止めてゆき、かつて火のごとく燃えた霊を萎びた抜け殻にしてしまうのだ。ハデスで時間を過ごしすぎたなら、訪問者は自分がしようとしていたことを諦め、やがて何に対しても無関心になってゆく。 ハデスの3つの階層は“憂鬱”と呼ばれている。それぞれの“憂鬱”において、ゆっくりと気力を挫いていく悪意が浸透している。 次元界ガイド:灰色の荒野の憂鬱な点は、そこ鈍い灰色の世界である、まさにそのことである。大地は灰色、空も灰色そして請願者も灰色である。まるで視覚が腐敗したかのように、ここでは鮮やかな色彩といったものは異質のものであるのだ。訪問者がこの次元界に一歩足を踏み入れたとたん、何もかもが白、黒、そして灰色になる。天には太陽も月も星もない。ただ空がわびしい薄暗い光を帯びているだけだ。 この陰鯵さは視覚にのみ働きかけているのではない。これは霊的にも陰鬱なものとなっているのである。この陰鬱はハデスで時を過ごすものすべての心に入り込んでくる。(ハデスの請願者すべてのように)必要以上に長くハデスで過ごすものは感覚を欠いてしまう。彼らは笑わない。彼らは働突しない、そして他人に関心を持つことすらしない。彼らはただ絶望するのみだ。その希望は失せ去りそして二度と戻ってこない。 ハデスの"幽閉"の性質と"灰色"と呼ばれる霊的な疾患がハデスの陰捗さを最もよく表している。 "幽閉":これはハデス独特の性質である。クリーチャー種別が"来訪者"でないクリーチャーがハデスにいると、その間、無関心と絶望が募ってゆく。色は灰色がかり鮮やかさを失い、音はこもり、仲間の態度ですら不愉快なものに感じられる。ハデスで過ごした1週間の終わりに、来訪者でないクリーチャーは意志セーヴィング・スロー(難易度10+連続してハデスで過ごした週の数)に成功しなければならない。失敗したものはハデスの請願者となり、この次元界の制御下に入ってしまう。ハデス本来の悪に捕らわれてしまった旅人は、自分の意志でこの次元界を離れることができず、そうしようという気も起きなくなる。それ以前の人生の記憶は薄れて消え去ってしまい、そうしたキャラクターを元に戻すには、ウイッシュかミラクルが必要となる。 "灰色":ハデスにいる10以上の呪文抵抗を持たないクリーチャーは(来訪者も含めて)、この霊的な毒の効果を受ける。10以上の呪文抵抗を持たないクリーチャーはハデスで24時間過ごすごとに意志セーヴ(難易度13)を行なわねばならない。失敗するたび、1ポイントの一時的な【判断力】ダメージを受ける。犠牲者はこの効果によって【判断力】が最低1ポイントになるまで下がりうる。他の多くの一時的能力値ダメージと異なり、"灰色"によるダメージは犠牲者がハデスをあとにするまで治癒しない。この"灰色"による【判断力】ダメージは、無関心、絶望、喪意が次第に強くなってゆくことを示している。 この効果はハデの"幽閉"効果と組み合わさって作用する。"灰色"による【判断力】ダメージによって、"幽閉"特性が示す、希望の喪失に抵抗するための毎週のセーヴィング・スローがどんどん困難になるのである。 |
物理的特性 | 通常の重力 通常の時間流 |
元素およびエネルギー特性 | なし |
属性的特性 | 重度な悪属性 |
魔法的特性 | 通常の魔法 |
住人・請願者 | 灰色の荒野にはあらゆる種類の汚らわしいクリーチャーがいる。ここは下層次元界の戦場であるため、デーモン、デヴィル、スラード、フォーミアンがいる。時にはデーヴァですら見かける(戦争の様子をスパイしているのか、あるいは部隊から脱走したのか)。もちろん、そのほとんどが本来の故郷であるこの次元界を離れ、隣のゲヘナに移り住んだという事実にもかかわらず、ユーゴロスも多い。ナイト・ハグもまたハデスには多くいる。彼女らは常にラルヴァと呼ばれる特殊な請願者を探している。このラルヴァは、悪の存在や神格と暗黒の取引を行なう際に、いわば霊的な通貨という形で使われるのだ。流血戦争の残骸や、ナイト・ハグ、請願者の他に、ハデスには癇の強いナイトメアの群れがいる。 ハデスの請願者 |
遭遇表 | 地獄の遭遇表 奈落の遭遇表 |
階層 | ||
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オイノス/Oinos | ハデスの最初の"憂鬱"はいじけた木が立ち、フィーンドが流浪し、悪性の病気力痩延する場所である。しかし、それより何より、ここは戦争によってやつれきった次元界なのである。ここは流血戦争の主戦場であり、フィーンド、戦奴、戦闘獣、傭兵が終結し叙事詩的な規模の酸鼻を極めた戦争を行なっている。こうした戦いによって、すでに荒れ果てた地がさらに荒らされるのである。引き裂く爪や打ち鳴らされる武器の昔、そして悲鳴がこの階層全体に響き渡っている。 フェイル―ン オイノスには多くの神格の領地、インキャビュロスの領地である「チャーネルハウス」、ケレンヴォーの領地である「クリスタル・スパイア/the Crystal Spire」(以前はミルカルのボーン・キャッスル/Bone Castle)、オークの神格ヤートラスの領地である「フレッシュスラウ/Fleshslough」、ドワーフの神格アバサーの領地である「グリッターヘル/Glitterhell」、ウルドの神格クラウリークの領地である「ウルドレスト/Urdsrest」などが存在する。ここはまた、多くの場合流血戦争における戦場となり、そしてユーゴロス傭兵たちの故郷である「キンオインの荒れ果てし塔」が存在する。 |
キンオインの荒れ果てし塔 |
ニヴルヘイム/Niflheim | ハデスの2つ目の"憂鬱"は弱々しい木々と不吉な絶壁の中、灰色の霧が絶えずよじれて渦巻く階層である。その希薄な霧のせいで視界はもっとも遠くへ届いたとしても100フィートに限られ、音はくぐもり、そして何もかもが湿気に侵されている。ニヴルヘイムはオイノスとは異なり、それほど戦争で荒らされてはいない。おそらくはこの霧が戦闘の邪魔になるためであろう。フィーンド種のダイア・ウルフやトロルなどの、多くの肉食獣霧の中に隠れてこの地を徘徊している。 ニヴルヘイムでは、視界(暗視を含む)は100フィートに限定され、その霧の消音作用により〈聞き耳〉判定には-4のペナルティが課される。 フェイル―ン ヘルの領地である「ニヴルヘイム」(そしてそれがこの階層自体の名称ともなった)、シャアの領地である「喪失の宮殿/Palace of Loss」、パンズリエルの領地である「リズリエル」、マスクの領地である「シャドウ・キープ/Shadow Keep」、アラウンの領地である「アンヌン」 、呪われた島、ラートリーの領地である「ダーク・オブ・ナイト」などが存在する。更にユグドラシル―世界樹―の根はニヴルヘイムにあり、翼のないドラゴンであるニーズヘッグが永遠にその根を齧っており、最後には噛み切られるであろう。 |
無実の死 |
プルトン/Pluton | ハデスの3つ目の"憂鬱"は枯れかけの柳、萎びたオリーヴの木、そして夜のように黒いポプラの生えた階層である。ここは誰もここにいることを望まず、そして誰もなぜここに来たかを思い出したがらない場所である。もちろん、請願者に関しては選択の余地はないのだが。通常、流血戦争の戦火はこの最下層の"憂鬱"までは届かない。しかし、どちらか一方が、堕落してこの階層に囚われている、鋭く戦術に長けた定命の指揮官の霊を回収しようとして、略奪隊を差し向けることがある。 フェイル―ン ハグの女神格セジリューンの領地である「ハグセンド」、ヘカテーの第一の領地である「アイアイア」、ハーデース神の領地である「死後の世界ハデス」、更にはオリンポス山が存在する。 |
冥府 Corpus The Hill of Bones |
キンオインの荒れ果てし塔 /Khin-Oin the Wasting Tower | 20マイルの高さに及ぶ塔、キンオインは何も支えるものなしに立っている背骨のようにしか見えない。まさにその通りだというものもいる:キンオインはユーゴロスによって殺された神格の背骨だというのである。キンオインの基部はオイノスの灰色の大地に、空にそびえ立っているのと同じ高さだけ埋め込まれている。つまり、キンオインの地下のトンネルは深さ20マイルに達する。この荒れ果てた塔はミディアンクラルスという名のウルトロロスの王によって統治されている。実のところ、いくつかの噂はすべてのユーゴロス種族はここで生まれ、キンオインのもっとも底にある穴から生じたということを示唆している。フイーンドの軍隊が常にその塔の外にいたにも関わらず、ユーゴロス以外のものがこの塔を治めたことはない。この塔の部屋と階層に果てなどないように思える。ここには培養槽、魔法の研究所、そして瞑想室などがある。また、星径儀、ユーゴロスのための特別室、そしてそれ自体が戦場となっている階や演習場となっている階などもある。ミディアンクラルスはこの塔の頂点から統治を行ない、その支配権はシージ・マリシアス(「悪意の席」の意)に由来している。この荒れ果てし塔を統治するものは皆、"オイノロス"と呼ばれる。荒れ果てし塔への侵入に成功して最上階の部屋にたどり着いたクリーチャーは誰でも、自分自身がその称号を名乗る機会が与えられる。これには現在の統治者を倒し、シージ・マリシアスに座ることが必要である。シージ・マリシアスはアーティファク卜級の力をもつ玉座で、オイノスの階層を治める権限を与えるのだ。 |
無実の死/Death of Innocence | 小さな都市がこの霧深い松林に隠れている。"無実の死"は周囲の森から伐採された松材で建てられた都市である。 この都市には5000人以上の定命の存在と、ラルヴァでない請願者がいるが、彼らは自分の住居から出ることはほとんどないため、この都市を訪れたものはがらんとした印象を感じる。奇妙なことに、この都市の壁に守られたものは時折、自分の運命を改善したり、無関心を打ち破ろうと努力したりする。 大きな木の門が"無実の死"への入り口を塞ぎ、そして門と外壁の両方に釘が剛毛の様に植えつけられている。内側には幅広い街路が、灰色の大理石の噴水がある都市の中心まで続いている。建物と門の材料となる木からは樹液のように血がにじみ出し、その気の中に請願者が囚われているのだという話を確信させるに至っている。"灰色"もハデスの"幽閉"の特性も、この"無実の死"の壁の中まで影響を及ぼすことがはない。 |
冥府/Underworld | 冥府をとりまく灰色の大理石の壁は、目路のかぎり数百マイルは伸びており、その先にもかすかに数千マイルほども続いているように見える。壁には両開きの門が1つある。打ち延ばされた青銅からなるこの門は、ここを通り抜けようとした英雄たちの試みによってへこみ、傷ついている。さらにこの門は恐るべき魔の獣によって守られているのだ。この巨大サイズの三つ首の猟犬は、数百という請願者の身もだえし、腐りゆく体から成っている。 この門を越えた内側は、特に外側と変わらないように見える。黒ずんだ木々、打ちひしがれた班、荒廃した台地が光景をすべて支配している。ラルヴァはそこらじゅうにおり、塵の中で身もだえしている。同様に、灰色の死霊じみた請願者――この次元界の霊的な衰退のせいで、すべての感情が完全に枯れ果てる寸前である-もたくさんいる。彼らが最後の感情の断片を失ったとき、彼らに残された最後の霊性はプルトンの憂諺と一つになるのである。 時折物質界から、偉大な英雄や死に物狂いの恋人が、ステュクス河の支流を使ったり、火山の巨大な裂満に隠されたポータルをぬけて、この階層にやってくる。彼らは友人や恋人の霊を見つけ出し、そして永遠の絶望からその霊を救い出せると信じて、この冥府にやってくるのだ。 ラルヴァ、消えうせかけている請願者、そして時たま訪れる愚かな定命の存在に加えて、デーモン、ユーゴロス、そしてデヴィルがご馳走に一口ありつこうとこの地を俳佃している。 |