風吹きすさぶ魔窟パンデモニウム

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風吹きすさぶ魔窟パンデモニウム /Windswept Depths of Pandemonium
外方次元界
解説 パンデモニウムとは、膨大な固体質量の中に無数のトンネルが走る次元界である。トンネルは、この次元界特有のうなりを上げて吹きつける風にえぐられてできたものだ。ここは風が強く、騒音がひどく、自然の光源が何もないので暗い。通常の火は風のせいですぐ吹き消されてしまうし、長時間明りを灯していると、風のうなり声にさらされ続けて気が狂ってしまったワイトどもが引き寄せられて来る。すべての言葉、すべての悲鳴、すべての叫びは風にさらわれてしまい、風はそれを次元界のすべての階層に運んで行く。会話は叫ぶような大声でしなければならず、そうしたところで10フィートを越えると言葉は風にかすめ取られてしまう。パンデモニウムのすえた空気は冷たく、無防備な旅人の身体から熱を奪う。止むことのない強風は、月に砂と挨をたたきつけ、松明を吹き消し、同定されていないものを吹き飛ばすなどして住民たちを打ちのめす。場所によっては、クリーチャーを何マイルも吹き飛ばして、どこかの暗く誰の目にも触れることのない断崖絶壁に張り付く、潰れた肉塊に変えてしまうような、すさまじい強風の吹<所もあるという。多少なりとも風から身を守れる場所もわずかにある。そうした場所では、風は次元界のどこか遠くの方から気味の悪い木霊を運んでくる微風程度に静まる。木霊する声は歪められて、まるで苦痂の叫に聞こえる。虐殺の神エリスヌルは、パンデモニウムに恐怖の世界を築いている。

次元ガイド:パンデモニウムという名は「怒号と騒音」を意味する。この定義が示す通り、パンデモニウムはひどく騒がしいところである。パンデモニウムには4つの階層があり、そのすべてで恐ろしい暴風が吹き荒れている。パンデモニウムにおける視界は、物質界の地下深くと同様であり、自然の光源は何もない。

パンデモニウムにおける聴覚:絶え間ない風の叫びのために、10フィートより遠くで発せられた音を聞き取ることは不可能である。同様に、[音波]エネルギーに基づく呪文や効果の有効距離も10フィートに制限される。1d10ラウンド風にさらされた旅人たちは一時的聴覚喪失状態になり、24時間以上きらされ続けた者は恒久的聴覚喪失状態になる。一時的聴覚喪失状態のキャラクターは、風の外で1時間過ごすことで聴覚を取り戻すことができる。

この聴覚喪失効果は、耳栓や類似の道具で無効化できる。当然のことながら、耳栓をつけた状態というのは実質上、通常の聴覚喪失状態と同じである。

物理的特性 客観的重力方向:洞窟のようなパンデモニウムのトンネルにおいて、重力はクリーチャーの最も近くにある壁面に向かって働く。つまり、ここには通常の意味での床や壁や天井の概念が存在しない。何かの表面にある程度近づくと、そこが床になるのだ。狭いトンネルでは稀に、重力がぴったり釣り合い相殺されていて、旅人がその中を信じられない速度で飛び抜けて行くことのできるところもある。ただし、プレゲトンの階層では例外的に、通常の重力の特性が働いている。

通常の時間流
元素およびエネルギー特性 なし
属性的特性 軽度な混沌属性:属性が秩序のクリーチャーは、パンデモニウムでは【魅力】を基本とするすべての判定に-2のペナルティを被る。
魔法的特性 通常の魔法
住人・請願者 恐らくパンデモニウムはすべての外方次元界の中で最も住民の少ないところだろう。ここより暮らしにくい次元界などというものはまず考えられない。もっと暑い次元界や、もっと寒い次元界や、もっと残忍な住人の住む次元界はあるだろう。しかし、ここほど精神の消耗するところは他にない。絶え間なく響き渡る風の悲鳴を聞いていると、最も高尚なセレスチヤルであろうが最も卑劣なフイーンドであろうがそのうち気が滅入ってきてしまうほどだ。
時折出くわすフィーンドの溜まり場以外で、何か特筆に値する原住クリーチャーがいるとすれば(定命の人間やゴブリン類、巨人、ドワーフ、ドラウその他の種族の屑のような連中力藻まった小集団だろう。彼らはひとまとめにして`流刑者"と呼ばれている。彼らの遠い祖先は、はるか昔に忘れ去られたクリーチャーや呪文の使い手、追放刑に処された神格などである。そしてその子孫たちもまた、ここから抜け出す方法を見つけられずにいる。さまざま種族の流刑者たちは悲しいほど小さな街に身を寄せ合うことで、かろうじてこの過酷な世界を生き延びている。
パンデモニウムの請願者
遭遇表 奈落の遭遇表



階層
パンデスモス/Pandesmos パンデモニウムの第1階層には最大級の洞窟群があり、中にはいくつもの国がまるごとすっぽり入ってしまうほど広大なものもある。大小に関わらず、ほとんどの洞窟は無人で、風に吹かれるがままになっている。パンデスモスの洞窟やトンネルのいくつかには、どこにでも風が吹いていること以外にも共通点がある。小川となって洞窟から洞窟へと流れる冷たい水だ。時には壁面に働く客観的重力方向iが互いの引力を打ち消し合って、洞窟の真ん中に水が溜まっているところもある。こうした小川の多くは、全部がそうというわけではないが、ステュクス河の支流である。 乱痴気館
冬の広間
コキュトス/Cocytus コキュトスのトンネルの多くは、パンデスモスのものより小さい。これはつまるところ、トンネルに吹く風がずっと強いことを意味している。そのむせび泣くような風の音から、コキュトスには"哀歌の階層"という揮名がつけられている(コキュトスとは「号泣の川」の意である)。不思議なことに、この階層のトンネルには人の手で彫り上げたようなノミ跡がついている。だがそのような作業を成し遂げるのに要する時間たるや、想像を絶するものであろう。 遠吠えの岩場
ハーモニカ
プレゲトン/Phlegethon プレゲトンの狭く曲がりくねったトンネルには、水滴の落ちる音と風のうなりが合わさった、苛立たしい騒音力響いている。岩そのものが光と熱を吸収しており、すべての光源は、自然のものと魔法のものとを問わず、通常の半分の距離までしか照らせない。他の階層と異なり、プレゲトンのトンネルでは通常の重力が働いているため、絶え間なく吹きつける強い風と相まって、複雑に組み合わさった形の石筍と鍾乳石ができる。 ウィングラム
殺戮の城塞
アガシオン/Agathion この第4階層は、狭まりゆくトンネルがさらに細くなり、ついに途切れるところである。その先には無限の大きさを持つ堅い石に閉ざされた真空の、あるいは澱んだ空気に満ちた、閉鎖空間が数限りなく存在する。この泡のような閉鎖空間には、アガシオンとパンデモニウムの他の地域を接続するポータルを用いなければ辿り着くことはできない。しかも、ポータルに足を踏み入れると、必ず暴風が発生する。ポータルの位置を知らない者が、アガシオンにある閉鎖空間を見つけだすのは、ほぼ不可能である。そのため、諸神格は(神々の前には、その他の強力な存在が)この忘れ去られた空間をアイテムの保管庫や隠れ家として利用してきた。保管されているものは、制御不能なアーティファク卜や、貴重な思い出の品、失われた言語、いまだ生まれざる宇宙といったものかも知れないし、彼らの力を持ってしても殺すことができず、無力化して閉じこめておくしかなかったような、とてつもない怪物ということもあり得る。


乱痴気館/the Madhouse "荒涼党"/the Bleak Cabalとして知られる来訪者の一団が運営している城市で、旅人の宿場町として機能している。乱痴気館は無秩序に広がった雑然とした建物の群れをいくつかの円形の石壁で仕切ったつくりになっている。城市は洞窟1つの壁面という壁面を埋め尽くすほど大きい。ここにはおびただしい数の旅人や請願者、原住民がいる。宿泊施設やその他のサービスは、普通の町にあるようなものであればたいていある。とはいえ、乱痴気館の住民はかなりの割合で狂人か耳が聞こえないか、あるいはその両方である。
冬の広間/Winter's Hall パンデモニウムのこの地域は雪に覆われており、頻繁にブリザードが発生する。視界は、仮に光源があったとしても、せいぜい数フィートしかない。雪は決して止むことがなく、風のせいで叩きつけるような勢いで降ってくる。そのため、トンネル全体はもちろん、クリーチャーの体表までも氷の層で覆われてしまう。この氷の荒野にはフロスト・ジャイアントウィンター・ウルフが徘徊している。これらのクリーチャーはある極めて残忍な存在に仕えている。その存在は数々の名で知られるが、"トリックスター"と呼ばれることが多い。
遠吠えの岩場/Howler's Crag コキュトスの中心には、大釘のような岩がノコギリの刃のように立ち並ぶ岩場がある。ここには石と丸石と人の手の加えられた石材がさながら巨人の宮殿でも崩れ落ちたかのごとく積み重なっている。岩場の頂上はおおむね直径8フィート(約2.4m)の平らな壇のようになっており、壇のまわりを低い壁力諏り巻いている。この壇と、その上にいる者は、かすかな青い輝きに包まれる。岩場の下層部は兎穴のように小さなトンネルが網の目のように走っている。ただの行き止まりもあれば、どこかにつながっているところもある。どの穴も、不可思議な聖歌や祈祷文、あるいは数式か構造式を綴ったと思われる文字力洞窟いっぱいに書き込まれている。
パンデモニウムの原住民によれば、岩場の頂上で大声を上げて叫んだ言葉は、伝えたい相手が大いなる転輪のどこにいようと、その耳まで届くのだという。伝言の言葉は、悲鳴のようなうなりを上げる冷たい風に乗って飛んでいく。
さまざまな種類のデーモンたちは、この岩場に訪れる者たちが絶えないのを知っている。訪問者はたいてい考古学者か、占者か、行方のわからない友達か敵にメッセージを伝えたい人々である。彼らのほとんどは、待ち伏せしているフィーンドの餌食になってしまう。
ハーモニカ/Harmonica 伝説によれば、コキュトスにはハーモニカと呼ばれる場所があるという。そこでは洞窟を吹き付ける風が、途方もなく巨大な円柱状の岩々に穴を穿って筒となし、次元界のどこよりも酷い騒音を響かせているという。この拷問のような不協和音が鳴り響く迷路のような地域のどこかに、次元界移動の真の秘密(ポータルも呪文もいかなる道具も使わずに次元間を移動する技)が隠されている。ご多分にもれず、この秘密とやらも根拠のない伝説のひとつである。しかし、それを探し求め、ハーモニカの石柱の間に蕊れる者はあとを絶たない。
ウィングラム/Windglum ウィングラム(「憂鬱な風」の意)は縦横数マイルの広さの洞窟の中に作られた、流刑者の都市である。いくつもの巨大な天然の石柱が天井を支えている。数百もの永遠に燃え続ける球体が街に光を与え、無秩序に広がった家々を照らしている。家々は地元の人々から"諸侯の城塞"と呼ばれる防衛拠点に取り巻かれている。
ウィングラムの特徴は疑念に満ちた雰囲気にある。ウィングラムの市民はたやすくよそ者を信用しない上、その多くは精神的に不安定である。しかしながら、よそ者を歓迎してくれる宿が1ヶ所ある。宿の名を"鱗犬"といい、そこでは次元間旅行者同士が出会ったり、傭兵を雇ったり、情報を集めたり、仕事を探したりできる。
殺戮の城塞 "数多"の異名を持つ中級神格エリスヌルは羨望と悪徳、恐慌と醜さ、そして殺戦を司る神格である。エリスヌルは残忍な神格で、己の住まいを広大な城塞が崩れ落ちた廃嘘のような姿に作り上げた。実際、曲がりくねった通路には冷たい風が吹き込み、常に戦いの音が聞こえるようになっている。通路にはあらゆる種族の、戦いに狂った請願者たちが徘徊している。彼らは互いを情け容赦なく狩り立てて殺すこと以外の望みを何も持っていない。瓦礫の中心にはエリスヌルがいる。普段は請願者たちの(時として捕らえた定命の者たちの)繰り広げる終わり無き殺裁に夢中になっている。戦いになると、神格の姿は人間、トロル、バグベア、オーガヘと移り変わる。エリスヌルの血が流れると、そこから彼がそのとき取っていた姿と同じ種族のクリーチャーが生まれて来る。自ら望んで殺裁の城塞へ行こうとする者はいない。いるとすればエリスヌルに仕えている者か、神格の主宰する永劫の殺裁に加わりたいと望む者だけである。